もくじ
はじめに
どうも! みなため(@MinatameT)です。
アサクリの最新作である「アサシン クリード シャドウズ」の予告映像や公開情報が大炎上しています。
私はフィクション作品の表現規制に強く反対し、創作の自由を認める立場です。
そうした立場から今回の騒動を見ていきたいと思います。
この騒動は誤解や著作権侵害などの複数の問題点があり、話がややこしくなっているのが現状です。
また、公式の二枚舌が原因の「言った」or「言っていない」論争もあります(汗)。
この記事では、これらをできるだけわかりやすいように説明していきます。
アサクリシャドウズ騒動について
「アサシン クリード」シリーズは、フランスのUbisoftが開発、販売しているゲームです。
この最新作である「アサシン クリード シャドウズ(シャドウズ)」が大炎上した理由は……
- Ubisoftの日本に対するリスペクトのなさ(日本軽視)
- 著作物の無断使用
- 歴史考証があまりに不十分であること
などです。
今回の件では考慮すべきポイントが多いですが、1つずつ説明していきます。
「史実どおりの作品」という誤解
Ubisoftはアサクリシリーズについて、「史実からインスパイア(刺激)を受けたフィクション」、「創作の自由を活かして、ファンタジー要素を取り入れている」と明言しています。
それなのに、消費者は「史実どおりの作品」であると誤解し、燃やしています。
史実を参考にしたフィクションであれば、歴史の教科書ではないのですから、史実どおりに作る必要はありません。
どのような作品にしようが、制作サイドの自由です。
ただ、これまでのアサクリシリーズは歴史に忠実な描写が中心であり、ファンもアサクリシリーズの最新作である「シャドウズ」には、そうした内容を期待していたと考えられます。
それに、Ubisoftはシャドウズについて「歴史的忠実性を保った」や「当時の出来事を忠実に描いた」ということも言っていたので、ファンの期待は大きかったでしょう。
しかし、シャドウズの予告映像などの情報が公開されると、日本の歴史を考証したとは思えないくらい雑な描写があり、それが大炎上しました。
炎上後、Ubisoftは「史実からインスパイア(刺激)を受けたフィクション」と火消しのような声明を発表しました。
過去に「歴史的忠実性を保った」などとウソをついていたのは擁護できないものの、フィクション作品であることが公式で認められたのは良かったと思いました。
これで「史実どおりだ」と声明を発表していたら、私は何も擁護できなくなるところでしたからね……。
しかし、Ubisoftの問題点はこれだけではありませんでした。
ポリコレのゴリ押しにうんざり
日本人としては「戦国時代の日本が舞台なのに、黒人の侍が主人公なの?」と不思議に思ってしまうことでしょう。
ここで誤解をしていただきたくないのですが、私は「黒人キャラを出すな」と言いたいわけではなく、ゲームやアニメなどの創作物にポリコレ(政治的妥当性)を含めるものではないと強く主張したいのです。
黒人キャラやLGBTキャラをポリコレに考慮して増やすのはおかしいと思っています。
実際に、ポリコレをゴリ押ししたゲームにうんざりしている意見をよく見ますし、ポリコレで衣装ナーフとか顔面ナーフをされてしまうと、言い方は悪いですが購買意欲が失せるというものです。
フィクション作品は制作サイドが何かに忖度せずに、ありのままに作るものです。
そう、ありのままの姿を見せるのよ……です。
ただ、Ubisoftがポリコレの意図で黒人の侍キャラを用意したのかは不明です。
かなり怪しいとは思っていますが「疑わしきは罰せず」の精神で、ポリコレについてはこれ以上言及しないでおきます。
ウソの日本史
シャドウズで弥助(やすけ)は「伝説の黒人侍」とされていますが、弥助については歴史的資料が不足しており、史実どおりの描写ができません。
創作の自由はあるので、弥助のキャラ設定について私たちがとやかく言うべきではありません。
しかし、真に問題なのは、Ubisoftがシャドウズの制作の際に参考にしたであろう「ウソの日本史」についてです。
このウソの日本史は、日本大学のトーマス・ロックリー先生が自身の著書で広めようとしたものです。
ロックリーさんは「弥助が伝説の侍として活躍した日本史」を史実としたい立場だと見受けられるのですが、そうやって史実を改変しようとするのは大問題です。
坂本龍馬の件のように、ウソの日本史が広がってしまうからですね。
※「歴史は勝者が語り継ぐストーリー」と言われるとおり、影響力や権力を利用して歴史的資料を焚書したり、改ざんすることは過去にあったと推測されますね。
ロックリーさんの著書がフィクション作品なら問題はなかったのですが……これは一切擁護できません。
松鷹図の使用料
二条城の松鷹図は非常に古い作品なので著作権は切れているのですが、国の重要文化財に指定されています。
実際に京都文化協会などがデジタル化された松鷹図を管理しており、それを商業利用するためには使用料が必要です。
ここで、Ubisoftがシャドウズでそのデジタルデータを「無断で商用利用した」というウワサが広まり、使用料を払っていない疑惑が生じて炎上しました。
しかし、デジタルデータの無断使用については私たちが確認できることではないので、これも「疑わしきは罰せず」で問題なしとすべきでしょう。
そもそも、シャドウズの松鷹図は丸パクリ(複製)ではなく「松鷹図を参考にしたフィクション作品」なので、京都文化協会の許可は必要ないと考えられます。
関ケ原鉄砲隊の旗の無断使用
関ケ原古戦場おもてなし連合の団体の1つである「関ケ原鉄砲隊」の旗(著作物)を、Ubisoftがシャドウズのコンセプトアートに無断使用した事実が発覚しました。
これは松鷹図の場合と違って、著作権侵害なので明らかに問題といえます。
ただ、著作権侵害は基本的に親告罪なので、当事者間(Ubisoftと関ケ原鉄砲隊)で話し合って解決する話であり、部外者がとやかく言うことではありません。
また、関ケ原鉄砲隊は「旗を関ケ原鉄砲隊のものだと認めて、連絡してから使用するのであれば問題はない」としており、Ubisoftは関ケ原鉄砲隊に謝罪したので、部外者が旗の無断使用についてこれ以上騒ぐのはよろしくないでしょう。
AI生成疑惑の雑なコンセプトアート
シャドウズのコンセプトアートは「AI生成されたものではないか?」という疑惑が広がりました。
AIアートを販売すること自体は法的に問題ないものの、雑に用意したコンセプトアートは消費者に悪い印象を与えてしまいますよね。
特に「反AI」と呼ばれる人たちの怒りや反感はすごいです。
それに加えて、既存の歴史的資料(画像)とよく似たものがコンセプトアートから大量に見つかっており、悪い印象がさらに強まる事態となりました。
これについては、なんでもごちゃ混ぜできるのもフィクション作品の利点だと思うので文句は言いませんが、確かに粗雑すぎる印象は受けました。
日本蔑視と批判されているのもよく理解できます。
誤解とキャンセルカルチャー
キャンセルカルチャーとは、社会的に悪い言動をとった人やそのような作品に対して、活動停止や販売停止などを求めることです。
記事のはじめのほうで説明したとおり、消費者がアサクリシリーズについて誤解しており(誤解されても仕方がないのですが)、それがキャンセルカルチャー(発売中止を求める署名活動など)につながったと考えられます。
Ubisoftが明言しているとおり、アサクリシリーズはフィクションであり、史実どおりを謳ったゲームではありません。
したがって、「弥助が伝説の侍として出てくるのはおかしい」といった、史実と違うだろ系ツッコミはもう的外れだといえます。
また、弥助について「私たちの侍」と表現したことも炎上したのですが、アサクリはフィクション作品なので、実在の弥助と切り離して考えれば良いだけだと思います。
言葉どおり「私たち(Ubisoft)の侍」なのですから。
私は法的に問題がない作品に対してのキャンセルカルチャー……シャドウズであれば発売中止を求める活動には断固反対の立場ですが、個人が「期待を裏切られたので買わない」や「ポリコレ感があるので買わない」と表明するのは、表現の自由の範囲でOKだと考えています。
今回のシャドウズの件は単なるポリコレ棒で叩く話とは性質が異なるものの、お気持ちの暴走形であるキャンセルカルチャーに発展したのはよろしくないと思っています。
邪推:Ubisoftに差別的な意図があった場合
これまでのアサクリシリーズは史実の考証がよくできており、それがアサクリのファンに支持されていました。
そのため、シャドウズについてもファンは史実の考証がよくできているものだと思い込み、シャドウズをプレイしたファンは「弥助は伝説の黒人侍だった」と日本史を誤解してしまう恐れがあります。
しかし実際のところ、今回のシャドウズはフィクション色が強く、Ubisoftはアサクリシリーズという大きなブランドを悪用して、ファンに誤解を与えるつもりだったのではないかと疑うことができます。
つまり、Ubisoftはシャドウズで誤った(塗り替えたい)日本史を世界に広げようとしているという陰謀が邪推できるわけです。
ロックリーさんと手を組んで……ですね。
こうして邪推したくはないのですが、Ubisoftの過去のウソ(二枚舌)や日本に対する雑な扱いが不信感を招いたのは事実といえます。
私はフィクション作品の表現の自由(創作の自由)は認められるべきだと考えていますが、Ubisoftのやり方(ウソをついたり、著作権侵害をしたこと)はさすがに擁護できません。
まとめ
私の考える、今回の騒動の問題点をまとめます。
- Ubisoftによる「歴史的忠実性」のウソ:炎上後、フィクションであると強調。
- Ubisoftによる著作権侵害:当事者間の問題であり、謝罪済み。
- トーマス・ロックリー准教授によるウソの日本史
- 消費者によるキャンセルカルチャー
Ubisoftのウソについては、炎上後に「フィクション」だと強調することで事実上の撤回となりましたが、これはUbisoftに対する不信感につながりましたね……。
また、著作権侵害は当事者間の問題とはいえ、これも不信感を招いた要因の1つだったといえるでしょう。
ロックリーさんのウソの日本史については、何も擁護できません(笑)。
シャドウズに限らず、ゲームなどのフィクション作品を対象としたキャンセルカルチャーについては、私は否定的な立場です。
法的な問題がないのに、社会的な圧力でフィクション作品がつぶされるのは望ましくないと考えているからです。
今回であればUbisoftがフィクションを明言したことですし、私はもうキャンセルカルチャーをやめるべきだと考えています。
まあ、Ubisoftが二枚舌なしで最初からフィクションを強調していたら or アサクリではなく別のゲームシリーズとして制作していたら、ここまで炎上していなかったとは思うのですが……どうでしょうか?
さて、今回のアサクリ騒動については多くの意見がありましたが、私の意見はこの記事で述べたとおりです。
長くなってしまいましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
おまけ:史実をもとにしたフィクションは難しい
ミセスのコロンブス騒動でも思ったのですが、史実をもとにしたフィクション作品を創作すると、歴史を教科書的にたくさん勉強してきた人たちにドヤ顔で(?)批判されがちです。
もちろん、フィクション作品であれば史実と異なっていても大丈夫なのですが、「元ネタへのリスペクトや配慮が足りない」だとか「教養のない人がノンフィクション作品だと誤解し、間違った知識をつけてしまう」といったポリコレ棒で叩かれたりするのはよくあります。
ただ、こうした批判を恐れて過剰に配慮をしていたらきりがないですし、創作の自由がありますから、アーティストやクリエイターには自由な創作活動を続けてもらいたいところです。
それが、創作文化を守ることにつながります。